【読書キロク】シンギュラリティ

小説『シンギュラリティ』の感想です。
著者はチーム2045
このチーム2045というのは、新日鉄住金ソリューションズの若手有志によって結成されたプロジェクトらしい。

つまり同じ会社の有志5人により共同制作された作品。
メンバー達は小説を書いた経験はなし。
だが、一つのプロジェクトとしてみんなで設定を練っていきストーリーを作り上げていったようだ。

そんなわけで、なかなか興味深い試みによって完成した小説である。

 

感想

以下普通にネタバレあります。

プロジェクト型小説とのことだが、1人の小説家が書いた小説と何ら遜色ない完成度だった。
一応括りはライトノベルらしく、さくさく読める。
ITにそこまで詳しくない人間でも楽しく読めた。

物語は、主人公の竹下結依がVROプロジェクトに携わるところから。
モグラの正体を探りながらプロジェクトを進めていくという話。
最初のプロローグから厨二病心がくすぐられる。
やる気がないプロジェクトメンバー達が徐々にやる気を出して団結していく様も良かった。

ジャンル問わないものづくりの基本、”使う人の気持ちを第一に考える”という精神が出てたのも良かった。

微妙に読後モヤモヤするのは、アンドーナツおばさんの”FaIT!”というメッセージに何か意味はあったのかという点と、松阪は結局お咎めなしだったのかという点など。
シンギュラリティを阻止する組織もそのままだし、もしかしたら続編もあるかも?

何はともあれ、会社内で業務とは直接関係ない”小説を書くプロジェクト”が立ち上がるというのもなかなか凄いなと思う。
業務とは関係ないものだが、この小説プロジェクトに携わった結果として仕事にもいい影響が出そうだ
日本企業全体にこういう動きが浸透したらなかなか面白いとは思うけど、
それが出来ないが故の現在の日本企業なんだろうなぁ…

ハイライト

では内容ふりかえります。

プロローグ

モグラ(スパイ)が組織の者と連絡を取る様子。
人工知能、VROプロジェクトなどといった言葉が飛び交う。
この本のタイトルにもなっている”シンギュラリティ”とは人工知能が人類を超えること。
どうやらモグラ達はそのシンギュラリティを阻止しようとしているらしい。

「愚かな論理だよ。自らの生存のために、敵より強大な力を欲する。人間の歴史は恐怖心と猜疑心に突き動かされた戦いの歴史とも言える」
「人間同士の争いで生まれた兵器が人類全体を脅かす。なんとも皮肉な話ですね」
会話から既に厨二心がくすぐられる。

1

プロポーズ

ここから主人公の竹下結依視点。
三十歳も間近の状態で、彼氏からプロポーズを受ける。
しかし、結依の仕事は政府管轄の国家戦略室に所属する、管理官という仕事。
(※管理官は架空の設定です)
ようやく仕事も軌道に乗ってきた状態だし、返事に悩む結依だが…

 


バーチャル・ウェディング

ヴァージン・ロードを歩く結依。
しかし、それは本物の結婚式ではなく「バーチャル・リアリティ」による結婚式を疑似体験するソフトだった。
場には結依の他に、上司の桑原、後輩の松阪。
プロポーズの後、結局結依は彼氏とは別れることとなった。

 


VRO

バーチャル・リアリティ・オフィス。
いわゆるオフィスの仮想空間。
これにより、通勤が困難な子育て世帯や高齢者なども自宅で労働が出来るようになるという代物。
このプロジェクトはアイアン・ソリューションズというSIerが手がけている。

これから結依の携わることになったプロジェクトである。
プロジェクトには、元々桑原と松阪が入っていたが、助っ人として結依が呼ばれることになった。

 


モグラ

桑原から秘かに告げられたのは、「このプロジェクトにモグラが紛れ込んでいるかもしれない」という事実。
モグラ…すなわちスパイ。
気をつけるように忠告される。
いよいよ厨二臭くなってきたぞ。いいぞ。

 


朝会

アイアン・ソリューションズのプロジェクトルームがあるお台場にて。
プロジェクトメンバーと結依との初顔合わせの場。

主なプロジェクトメンバーは、
長髪にロックTシャツの(アプリチームのリーダー)
絵に描いたような技術者とでも言うべき眼鏡の角田(インフラチームのリーダー)
美人の上原夏美
小太りの坊主頭でだらしない澤地

どこか一体感がなく、白けたムードのプロジェクトメンバー。
そんなメンバー達に宣戦布告しようとする結依だが、遅れてきた澤地の登場によりうやむやになる。

 


モグラの報告

やはりモグラはプロジェクトに紛れ込んでいるらしい。
集中ルームというプライベートが守られた部屋に入り、仲間に報告をするモグラ。
ここから一体どう動いてくるか。

 


着任二日目

結依は一番乗りで出社して、チーム全員の机を拭く。
すごい心意気だな…

町の落書きをきれいにしたら犯罪の件数が減った例もあると言うし、物事は思わぬところで思わぬものと繋がっているものなのだ。

 


アンドーナツおばさん

安藤奈津子ことアンドーナツおばさん登場。
結依は、掃除のおばちゃんである彼女と意気投合する。

2

中間報告会

結衣が着任してプロジェクトは順調に進んでいたと思われた。
しかし、中間報告会で結依が用意したあるはずの資料が見つからず…。
結果的に失態を犯した形になってしまう。
この出来事は決して結依の失態ではなくモグラの仕業。とうとう動き始めたか。

 


アンドーナツ

アンドーナツおばさんからの差し入れ。
中には『FaIT!』というメッセージ。
フランス語で『事実』という意味だが、結依はそうではなくただの『Fight』のスペルミスだと結論づけた。
しかし、このタイミングで無言の差し入れ、読んでて何かあやしいと思ってしまう。

 


ウィルス

ある日、プロジェクトルームはルーム内の全ての端末がまともに起動しなくなり大騒ぎ。
どうやら澤地が開いたメールの添付ファイルにウィルスが仕組まれていたらしい。モグラの仕業?
何ともお粗末な感染の仕方だけど、逆にセキュリティがガチガチだから油断したというのもある。
澤地の失態だが、結依があえて責任を負うこととなった。

 


女子会

上原夏美に誘われてイタリアンレストランで食事する結依。
女子同士キャッキャと盛り上がりつつも、モグラの事を考える。
中間報告会に細工し、澤地のプライベートについてある程度知り得た人物。
”モグラは誰か”というミステリー要素が結構大きくて面白い。どんどん先が読みたくなる。

3

どうやら管理官という存在を敵視しているっぽい甲。
モグラの事もあるし、甲と角田の動向に注意を向けた結依は、甲の不審な行動に気付く。
30分ほど集中ルームに閉じこもって資料作成している甲。
なぜわざわざ集中ルームへ通うのか。

 


監視端末

モグラの可能性もあるし、監視端末を使って甲の端末画面を覗き見る結依。
そこに映っていたのは…犬だった。
どうやら自分の飼ってる犬の留守番の様子をチェックしていたらしい。
甲さん思ったより良い人だった。

最初はとっつきにくそうでも話してみると意外といい人ってパターン、結構あるよね。
結局「プロジェクト内で犬を飼う」という突飛な提案で乗り切った結依。
これで甲との信頼関係が生まれたかな。

 


テスト

テストチームから、どうやらあまり良くない結果が出ているらしいと報告があった。
そこで、甲・角田・結依・松阪で実際にテストしてみると…確かに違和感が。
どうにかして修正すべきだという甲と、慣れるしかないという角田が衝突。
プロジェクト内に亀裂が走ってしまう。

 


方針転換

結依の提案により、アバターを使うのではなく使用者の実際の姿を使うように大胆な方針転換をすることになった。
それは「VROプロジェクトを何のために作っているか」と初心に帰った結果。
完成すること自体が目的ではなく、その後に利用者に活用してもらう為のプロジェクトだ。
だが人は納期に追われたりすると、目的を見失ってしまいがちになってしまう。

「それでも、改善すべきだと思うんです。できない理由を探せばキリがない。目的のために、こうしたらできるかもしれないという方法を探しましょう。使ってくれる人がいて初めて、私たちの努力も報われるんです。作って終わりじゃないんです。使ってくれる人がいて、その人たちが幸せになって、そこがゴールだと思うんです」

結依の指摘を受けて自分達の負担を覚悟しながらも方針転換の決定をした甲と角田、なかなかいいリーダーだ。

 


Brutus

モグラの仲間とのやり取り。
ログイン名がBrutusでまんま裏切り者なのが笑える。
しかしモグラもプロジェクトに情が移ったか?
結局誰がモグラなのか。

 


システムテスト

「最終版」のヘッドセットを用いた二十人規模のテスト。
しかし、10人を超えたあたりから一気に遅延がひどくなる。

「まあ、問題が起きてもらわないと困りますよ。問題を洗い出すのが、テストの意義なんですから。一切問題が起きないほうが、むしろ怖い」

原因は、「最終版」のヘッドセットの相性の問題だった。
ハード側とのコミュニケーション不足、急な仕様変更。
そして再度甲と角田が衝突してしまう。
しかし、そこは普段クールな松阪が珍しく大声を上げて制止する。

 


原因特定

プロジェクトメンバー達の努力により、何とか原因特定。
そして角田の指示によって新しく出来上がったヘッドセットを使った実験。
遅延は起きなくなったが、今度は描画に問題あり。

一つの問題を解決したらまた別の問題が浮上する…。
その問題を地道に解決していく…。
気の遠くなる作業だと改めて思う。

 


悪いニュース

描画問題が発生してから何日か経ったが、ノイズが起きる法則性や原因は依然不明。
これを完璧に解決するためには半年ほどかかる。それでは納期には間に合わない。
仕方がないのでこの問題を無視したまま先に進むことになるか、それとも…

 


スカイアロー

束の間の休息の時に結依が訪れたのは、かつて自分が手がけた東京スカイアロー。
そこで偶然別れた元彼の誠と会う。
誠との会話で出た”免震構造”という単語。この単語から何かヒントを得た結依。

 


免震構造

結依が提案したのは、ノイズが発生するのは仕方ない。
としたうえで、その発生したノイズに対応する仕組みを作ること。
主任研究員の『春元さん』に相談してみることになる。
どうやらAIを使った新しい解析ソフトを作っている人らしい。

研究所は横浜にあるため、結依、甲、角田の三人で横浜に行くことになった。

 


春元

早速ツールの画面を見せてもらう。
カッコイイ画面だと率直な感想を述べる結依。

「こういうツールはさ、見た目には力を入れてなくて、素っ気なくてわかりづらい画面のものが多いんだけどさ、得てしてそういうツールは性能もイマイチなんですよ。やっぱ使う人のことをしっかり考えて、どこにも手を抜かないって姿勢のツールじゃなきゃね」

本家のVROプロジェクトのメンバーもそうだが、春元も使う人間の事を考えて手を抜かずしっかりとやっている。
ある意味職人としてのこだわり、技術だと思う。

 


データ

更に今AIに解かせている問題を見せてもらう結依達。
それはローンを借りに来た人のパーソナルデータとその貸し倒れ結果を教師データにして、新規に借りに来た人の貸し倒れリスクを予測させるというもの。

「こんな無機質なデータの集合からだけど、なんだか人間の深いところが見えるような気がするでしょ」

 


問題解決

後日春元の送ってきたツールにより、ノイズ問題は見事解決。
だが、ここで新しい深刻な問題が浮上。
角田の奥さんが体調を崩し、角田が子育てのためにプロジェクトを離脱するというものだった。
角田の技術力は、プロジェクトの要。抜けるとなるとその穴はあまりにも大きい。

4

松阪

モグラについて話す結依と桑原
しかし、その様子を全て端末越しに松阪に見られていた。
モグラは彼だったのか。

 


通話

松阪と仲間との通話。
モグラとしての次の手段はアイアン・ソリューションズのデータセンターの情報を入手すること。
だが、松阪は既にプロジェクトに情が…
というよりは結依に好意を持ち始めている…?

 


松阪と結依

角田の偽造入館証を使って情報入手を図る松阪。
しかし、そこに結依が現れる。
危うく結依にバレそうになった松阪は、思いがけず結依にキスしてしまう。

 


絶縁

情報は抜き出したものの、ログを消す事に失敗した松阪。
仲間の期待を裏切った事、更に考え方の違いにより松阪は仲間と絶縁する形になる。
黒幕は何かするつもりだが…?

 


ランサムウェア

翌日、結依がプロジェクトルームに入ると、プロジェクトメンバー全員のPCがランサムウェアに犯されていた。
ランサムウェアに犯されたPCはロックされ、条件を満たさない限り解除されない。
とりあえずそれぞれ出来ることをやることになった。

 


復旧

バックアップデータから復元しようと思いきや、何とそちらも全てやられている模様。
ドラクエのセーブデータって例えは分かりやすいけど、結依がその例えを出すと不自然だなw
結局、現在凍結されている角田のアカウント内のデータが無事だったため、救われた。

 


テストの日

特に問題もなく、描画もきちんとされている。
そしてバーチャル会議室には、本来自宅にいる角田の姿も。
ほぼ完成か。

5

公開デモ

著名人を集めてVRO公開デモをやることになった。
デモはテレビ放送される。当然失敗は許されない。
作業の残りは持ち込む機材を緩衝材でくるみ、梱包して運送業者に引き渡すのみ。
元々澤地がやる予定だったが、アンドーナツおばさんがやっておいてくれるらしい。何か怪しい…

 


デモ当日

夏美と澤地もデモに参加することになった。
結依はデータセンターでテレビ局と国会のサポート。
ケンシロウも付いていくことになった。どこか様子がおかしいケンシロウ…
これは何か起こりそうな予感。

 


爆弾

データセンターにいる結依と松阪のもとに脅迫状が届く。
デモ参加者のヘッドセットに小型爆弾を埋め込んだらしい。
この爆弾を解除するためには、VROプロジェクトそのものを破壊する『ワクチン』というソフトウェアを使わなければならない。
いよいよ物騒な展開になってきたぞ。

 


偽の心拍数

爆弾はヘッドセットを装着している参加者の心拍数が増加すると爆発する。
では、偽の心拍数データを読み込ませればいいのではないかと提案する結依。
状況を理解している結依がヘッドセットを被り、心拍数を上げないように書き換えてもらうという算段。
度胸あるな…。テロには屈しない精神かっこいい。

 


作戦開始

結依がヘッドセットを被り、心拍数の書き換えをスタート。
やむなく夏美に事情を話すことになり、夏美の心拍数はみるみる上昇していく。
大ピンチになるが、結依が何とか夏美をなだめる。
こんな状況で自分の事だけじゃなくて夏美の心もケアする結依ほんとすごい。

 


黒幕

黒幕はアンドーナツおばさんだった。
松阪との格闘、ケンシロウのアシストを経て、何とか結依の爆弾を解除することに成功する。
しかしアンドーナツおばさんは結局何者だったんだ…
というかなぜ掃除のおばさんとして忍び込んでいたんだろう?

 


リリース記念パーティー

デモは結依(と松阪とケンシロウ)のおかげで無事終わり、時が経過。
リリース記念パーティーで久しぶりにプロジェクトメンバーと再会する結依。
結局松阪が結依に色々明かす前に物語が終了する。
アンドーナツおばさんがその後どうなったのかも不明だ。

VROプロジェクトの話としてはひとまずハッピーエンドに終わったんじゃないだろうか。




アンケート

この度、ジャンルの多角化に伴いアンケートをリニューアルしました
長いので、Q1のみの回答でも全然構いません
回答頂いたアンケートは今後の運営の参考にします。
既に前回のアンケート回答済の人もそうでない方も、もし良かったらご協力をお願い致します。
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