1. TOP
  2. Book
  3. 【読書キロク】騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー

【読書キロク】騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー

村上春樹作、小説『騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー』の感想です。
全2部のうちの第2部。

管理人は村上春樹作品読んだ経験はあまりなし。
高校生の頃に教科書に載っていた『七番目の男』に惹かれ、図書館で短編集を読み漁り
『アフターダーク』を何度か読み(彼の作品の中でもあまり評価の高いものではないようだが)
『色彩を持たない多崎つくる〜』を1度軽く読んだ程度。

名作と評されている『ねじまき鳥クロニクル』や『海辺のカフカ』は、実は読んだことがなかったりする。
そのうち読もう読もうとは思っているんだけどね。

そんな感じなので、決してハルキストや村上春樹フリークというわけでもないのだが
今回、2017年2月24日発売の『騎士団長殺し』は何となく気になったので、発売日に購入して読むことにした。

第1部の感想はこちら。

 

感想

ネタバレあります。

すっと読めるのだが、内容は難しい。
まだ咀嚼できない部分が多々ある。
何年か後にまた読み直したくなる類の作品だ。

読後感が妙に爽やかな気持ちになる作品だった。
爽やか、だと少し語弊があるかな。あまりしっくりする言葉が思い浮かばない。

最後、とユズの復縁と、娘のの事まで触れてくれて良かった。
の今後の人生がどのようなものなのか。室はどのような女性に成長するのか。
秋川まりえが今後どうなるのかも気になる。

というわけで、少なくとも読み終わった後、前向きな気持ちになった。

この物語は所詮、一人の画家が小田原の山の家に滞在している時に起こった、不思議な出来事の顛末に過ぎない。
主人公の私はこの出来事を通して、内面で大きな成長を遂げたように思う。
正直、本屋で平積みにされるほど万人受けするような大それた話ではないと思うが、個人的には好きな作品の仲間入りをした。

 

とりあえず一つ疑問なのは、結局秋川まりえが免色の家に閉じ込められた件と、がメタファーの世界を進む事に何の因果関係があったかということだ。
わざわざ騎士団長も犠牲になったわけだし、もちろん何らかの因果関係があったのだろう。
しかし、作中では具体的に明かされなかった。

なぜ、は『騎士団長殺し』を再現してまで、メタファーの世界へ行かねばならなかったのか。
これに関しては明確な答えは求めていないが、色々な人の考え、考察を見てみたい。

あと、あのプロローグは一体何だったのか。
顔のない男という人物はメタファーの世界で出てきた。
だが、顔のない男の肖像画を描くという描写はどこにも出て来ていない。

秋川まりえの救出後に、顔のない男がの前に再び現れたとは思えない。
ではあのプロローグは一体何だったのか。
それこそ何らかのメタファーだったのかもしれない。

他には、秋川まりえが免色の家に忍び込んだ時に、クローゼットの前にいた人物。
免色であって免色ではない、その存在とは。

と、この作品の中にはまだ数々の謎が残っている。
しかし、この小説は推理小説ではない。
明かされない方がいい謎もあるのだと思う。

前述の通り、村上春樹の作品にそこまで親しんできたわけではない管理人だが、
彼の作品は謎を謎のまま残し、また残すことによって魅力を増していると思っている。

思えば、彼の作品に限らず、現実世界にも謎は謎のまま残っているものだ。
例えば歴史上の出来事。
謎を解明しようと頑張っている人達もいるが、謎は謎のまま想いをめぐらせた方が魅力的な場合だってある。

 

一つだけ納得いかないのは、中学生の女の子が胸の大きさを気にするのはまあ分からなくもないが、
それをわざわざ36歳の男性に打ち明けることはないと思う。

村上春樹の作品において、それは(ヾノ・∀・`)ナイと登場人物のありえない行動をいちいち突っ込んでいたらきりがないんだけどね。

ナチスの話のところでも少し思ったが、南京攻略戦については特に、随分デリケートな話題を出してきたなとは思った。
私はあまり詳しく知らないので、そのことについては意見を持ちようがないのだが。
真偽はどうあれ、少しは知る必要があるのかもしれない。

以上、『騎士団長殺し』を読んだ現時点の感想。

ハイライト

ではふりかえります。管理人なりの解釈をしながら読み進めています。

33 目に見えないものと同じくらい、目に見えるものが好きだ

二度目の秋川まりえの肖像画制作の作業。
彼女は白いスバル・フォレスターの男の絵を見て、「このままでいいと思う」と言った。
まりえも鋭い視点を持っているというか…とにかく不思議な子だ。

肖像画の作業が終わり、昼飯を共にしていた私と秋川笙子まりえだが…。
食事も終えたころに、免色が訪問してくる。
とうとう彼はまりえとの対面を果たすのか。

自然の美しさは金持ちにも貧しき者にも分け隔てなく公平に提供される。時間と同じだ・・・いや、時間はそうではないかもしれない。裕福な人々は時間を余分に金で買っているのかもしれない。

33章の冒頭だが、結構好きな文章。
確かに自然は見る者の立場などは全く関係なく、その美しさを享受できる。

34 そういえば最近、空気圧を測ったことがなかった

免色と秋川まりえ、笙子との対面。
免色は緊張してあからさまに取り乱す。唐突にジャガーの空気圧を測りに行くほど。
まりえが免色の例の肖像画に興味を持ったので、次の日曜に笙子とまりえは免色の家を訪問することになる。
笙子と免色はジャガーの話で意気投合。

音ひとつとっても世界には実に多くの差異がある。ダブルベースの同じ開放弦を一度だけぼんと鳴らしても、チャーリー・ミンガスの音とレイ・ブラウンの音が確実に違って聞こえるのと同じように。

35 あの場所はそのままにしておく方がよかった

日が落ちてからまりえが再び訪問してくる。
今度は1人。秘密の通路を使って来たらしい(その通路を使うと私の家はまりえの家からかなり近いようだ)
彼女は、免色が何かを隠しているようだと言い当てた。
白いスバル・フォレスターの男の絵の時もそうだったが、なかなかに鋭い。
一方叔母の笙子は免色に少なからず好意を抱いたようだが…。

そして祠の裏の穴。
小さい頃からそれを見てきた彼女は「あの場所はそのままにしておく方がよかった」と言った。

「長いあいだずっと、あそこはそのままにされてきたのだから」

スタジオに置いておいたはずの古いはいつの間にか消えてしまっていた。

36 試合のルールについてぜんぜん語り合わないこと

翌日、祠の裏の穴の絵を描き始める私。
人妻のガールフレンドとセックスする私。
そして免石からの電話で明かされる、雨田具彦の弟、継彦の事。

雨田継彦は東京音楽学校でピアノの勉強をしていた。
しかし、なぜかは分からないが徴兵され、陸軍二等兵として南京攻略戦に参加することになった。
除隊後、復学して間もなく、屋根裏で手首を切って自殺した。
弟が自殺した頃は、まだ具彦はウィーンにいた。

この弟の悲劇も『騎士団長殺し』という絵をひそかに描いていた理由の一つなのではないか。
真相は分からないが。

37 どんなものごとにも明るい側面がある

は東京で雨田政彦と会う。
そこで雨田継彦の話を詳しく訊く。

継彦は徴兵猶予の書類に不備があったため、大学在学中ながらも徴兵されることになった。
そのため、不本意ながらも南京攻略戦に参加することになった。
そこでは何人かの捕虜の首を斬らされた。
そして除隊後、彼は屋根裏で手首を切り、自殺した。

痛ましい事だ。
雨田具彦はウィーン滞在中に継彦の自殺を知った。
ウィーンでの恋人との永遠の別れ、弟の悲惨すぎる死。
間違いなく雨田具彦の進路を大きく変えた出来事だろう。
騎士団長殺し』という絵は、そういった出来事を受けた雨田具彦の何らかの想いが込められていたのだろう。

38 あれではとてもイルカにはなれない

再び日曜日、秋川まりえの絵を描く作業。
そしてその作業後に彼女達は免色の家に、肖像画を見に行った。
久々の騎士団長登場。

しかし記憶は残る。記憶は時間を温めることができる。そして_もしうまくいけばということだが_芸術はその記憶を形に変えて、そこにとどめることができる。ファン・ゴッホが名もない田舎の郵便配達夫を、集合的記憶として今日まで生きながらえさせているように。

芸術は人の記憶を共有し、創り出した本人が死んだ後も生きながらえさせることが出来る。
それはもしかしたら物凄いことなのかもしれない。

39 特定の目的を持って作られた、偽装された容れ物

秋川まりえ達が帰った後、免色は私の家に来てウィスキーを酌み交わしながら話をする。
まりえの母親が死んだ後、父親は陰気な人間になり宗教にのめり込んだ事、人生について。

「試練はいつか訪れます」と免色は言った。「試練は人生の仕切り直しの好機なんです。きつければきついほど、それはあとになって役に立ちます」

「しかし私はまだそこまで歳をとった経験がありません。どういうことなのか、おおよその見当はつきますが、その実相を目にしたわけではありません。そして私はこの目で実際に見たものしか信用しない人間です。ですから自分がこれから何を目にすることになるのか、それを待っています。とくに怖くはありません。それほどの期待もありませんが、いささかの興味はあります」

「私はただの土塊ですが、なかなか悪くない土塊です」、免色はそう言って笑った。「生意気なようですが、けっこう優秀な土塊と言っていいかもしれません。少なくともある種の能力には恵まれています。もちろん限定された能力ではありますが、能力であることに違いはありません。ですから生きているあいだは精一杯生きます。自分に何がどこまでできるかを確かめてみたい。退屈している暇はありません。私にとって、恐怖や空虚さを感じないようにする最良の方法は、何よりも退屈をしないことなのです」

免色という男の人生観がこれでもかというほど語られる。
自信家な面もありつつ、度胸があり、そして本人も言ったとおり好奇心が非常に強い人だという印象を抱いた。

40 その顔に見違えようはなかった

夜中、誰かがスタジオにいて『騎士団長殺し』を眺めていた。
その人物は雨田具彦本人だった。

思わずぞくっとする場面である。

41 私が振り返らないときにだけ

スタジオに現れた雨田具彦はもちろん実物の肉体をそなえてはいない。
実物の雨田具彦は伊豆高原の高齢者養護施設に入っている。
生き霊」と呼ぶべきものなのかもしれない。
朝になって再びスタジオを見たら、もうその姿は消えていた。

雨田具彦は恐らく『騎士団長殺し』を見に来たのだろう。
それにしてもこの不思議な現象、村上春樹作品ならではという感じがする。

42 床に落として割れたら、それは卵だ

雨田政彦が出刃包丁と新鮮な鯛を持ってやってきた。
政彦は、ユズと今付き合っている男が自分の同僚であると明かす。
偶然のことだったが、二人は政彦の知り合いで出会った。
しかもユズは今妊娠している。

「明日は明日だ。今日は今日しかない」

雨田政彦は恐らく理想的な友人だと思う。

43 それがただの夢として終わってしまうわけはない

ユズが受胎したのは七ヶ月前、四月の後半。
がまだ東北の旅を続けていた頃だが、はユズとセックスする夢を見た。
それは射精を伴う夢だった。
論理的に考えるならそれは夢であって、現実にとユズがセックスしたわけではない。
免色の場合とは違って根拠もないことだ。

だが、論理で片付けるには、その夢はあまりにも鮮烈だった。

人は本当に心から何かを望めば、それを成し遂げることができるのだ。私はそう思った。ある特殊なチャンネルを通して、現実は非現実的になり得るのだ。あるいは非現実は現実になり得るのだ。人がもしそれを心から強く望むなら。

その時青森にいたはずの私は、あの夜、本当に広尾のマンションを訪れていた。
普通に考えたら絶対にありえないことである。
だが、あるいは…。いや、そのようなこともあると考えた方が面白いかもしれない。
村上春樹の書く世界の中では尚更。

44 人がその人であることの特徴みたいなもの

秋川まりえとのやり取りが中心。
彼女は免色の家を訪問した時、双眼鏡の存在に気付いた。
それを使って自分の家を覗いている事も察した。
本当に観察眼の鋭い娘だ。

45 何かが起ころうとしている

雑木林の中の穴』の絵が完成。
その日の夜にかかってきた秋川笙子の電話で、秋川まりえが行方不明になったことを知らされる。

秋川まりえが行方不明になり、物語は承→転に移行する。

46 高い強固な壁は人を無力にします

いなくなったまりえを探す目的で、と免色は例の穴を調べる。
しかし、そこにまりえの姿はなかった。
代わりにあったのは、彼女のものらしきペンギンのフィギュアストラップ

一体なぜそんなものが穴の中に落ちていたのか。
そもそも秋川まりえはどこに消えたのか。
私は秋川まりえの身に何か良くないことが起こっていると感じている。
彼女の身に何が起きたのか。

47 今日は金曜日だったかな?

騎士団長が再び登場。
騎士団長のアドバイスによると、土曜の昼前に、に電話がひとつかかってくる。
その誘いを絶対に断ってはいけない、というものだった。

48 スペイン人たちはアイルランドの沖合を航海する方法を知らず

翌朝、免色から秋川笙子と親密な関係になっていると明かされる。
秋川まりえの言ったとおり。
果たしてそれが彼女が消えた理由に繋がっているのか。

騎士団長のアドバイス通り、電話がかかってきた。
電話の相手は雨田政彦
雨田具彦のいる療養所へ一緒に行かないかという誘いだった。
私は騎士団長のアドバイスを聞き入れ、一緒に行くことにした。

車を走らせながら、雨田具彦が残したものについての会話。
たとえ凡庸な息子であろうと、政彦も雨田具彦が残したものの一つだ。

本編と全く関係ないが、レイバンのサングラスと聞くとどうしてもスパムが頭に浮かんでしまう。
TwitterやFacebookを中心に一時期流行ったアカウント乗っ取りスパムだ。
レイバンそのものに罪はないのだが…。

49 それと同じ数だけの死が満ちている

途中で寄った道路沿いのファミリー・レストランにて、白いスバル・フォレスターの男との再会。
(実際には会ったわけではいないが)
そしてとうとう雨田具彦のいる養護施設に到着し、は彼と初めて顔を合わせる。
と言っても彼は眠っていた。

雨田具彦が目覚めるまでの間、政彦とユズについて話す。
そこでユズが相手の男と結婚するつもりがないと言っていることを明かされる。
理由は分からない。彼女の意図は一体。

雨田具彦は目覚めたが、やはりまともに話が出来る状態ではない。
それでも、私が屋根裏部屋の話題を出した途端、彼の目が一瞬だけ煌めいた。
私の顔から視線を逸らさない雨田具彦。

政彦が電話で席を外し、と雨田具彦が二人きりになる。
いや、正確には二人きりではない。
ここで騎士団長が登場。
と雨田具彦と騎士団長が遂に揃った。さて、ここから何が始まるのか。

この世界には無数の生命と、それと同じ数だけの死が満ちているのだ。

50 それは犠牲と試練を要求する

騎士団長は雨田具彦に求められてここに来た。
秋川まりえを助ける為に、私は騎士団長を殺さなければならないらしい。

51 今が時だ

雨田具彦はウィーンで恋人や仲間たちを全員失った。
彼自身も拷問を受けて傷ついた。
また、弟は同じ頃に南京に行かされ、そのトラウマから自殺した。

彼は自分が成し遂げられなかったことを、『騎士団長殺し』という絵の中で偽装的に実現させた。
そういった寓意画であったが、彼にとってはあまりに生々しい出来事だったため、結局その絵は屋根裏部屋に封印された。
がその絵を発見し、白日の下に晒した結果、すべてのものごとの始まりになった。
それが環を開いた。

私は騎士団長を出刃包丁で刺殺し、顔ながをこの世界に引きずり出した。

この章は怒涛の展開で、頭の理解を追いつかせるのに大変だった。
いや、頭の理解は全く追いついていない。

52 オレンジ色のとんがり帽をかぶった男

顔なが、もといメタファーと話し、地下通路に足を踏み入れるまで。
メタファー。暗喩。
村上春樹らしい難解な表現だ。

53 火掻き棒だったかもしれない

ついに地下通路に足を踏み入れた
一本道をひたすら進む。

川の前でどちらの道を選ぶか迷った時、は免許の名前が川を渉るのであること、
彼が右と左なら必ずを選ぶと言っていた事を思い出す。
その彼の発言に意味はあったのか、はたまたなかったのか。
左を選んだの前に男が現れる。

54 永遠というのはとても長い時間だ

顔がない男登場。
恐らく第1部のプロローグで出てきた男だと思われる。
私は顔のない男に、渡し賃としてペンギンのストラップを渡す。
あの穴の中に落ちていた、元々は秋川まりえがお守り代わりにしていたものだ。

川を渡り、森を抜けた私を待っていたのは、ドンナ・アンナだった。

何となくこの不思議な感じは、読みながら梨木香歩の『裏庭』を思い出した。
内容はちゃんと覚えていないし全く違ったかもしれないが、あの作品も不思議な話だった。

55 それは明らかに原理に反したことだ

ドンナ・アンナコミの声に励まされ、私は洞窟を進む。
二重メタファーにとらわれないように。
体の苦痛を感じながら、狭い空間を進む
洞窟を抜けてが辿り着いたのは、あの雑木林の穴の石室だった。

足元には例の鈴。

読みながら何となく最終的にあの雑木林の穴に出るんだろうな〜と思っていたら、その通りだった。
それにしても不思議な話だ。

56 埋めなくてはならない空白がいくつかありそうです

は、鈴を鳴らしながら様々な考えを巡らせる。
そしてとうとう現れたのは免色
彼に助けられた。

現実世界では、火曜日
土曜日に地下通路に入って、それだけ時間経過していたのか。

物語は転→結と推移する。

でもそもそも時間とはなんだ?私はそう自分に問いかけた。私たちは便宜的に時計の針で時間の経過を計っている。しかし本当にそれは適切なことなのだろうか?実際に時間はそのように規則正しく一定方向に流れているのだろうか?私はそのことについて、なにか大きな思い違いをしているのではあるまいか?

時間。
考えてみると不思議なものだ。
私たちは時計などを使い、時間という概念と共に暮らしている。
しかし時間とはそういった規則正しいものなのだろうか。
一定方向に動いているものなのだろうか。

57 私がいつかはやらなくてはならないこと

騎士団長殺し』を確認したが、前見た時と変化はなかった。
考えを巡らせる
とにかく秋川まりえと話さなくてはならない。

人妻のガールフレンドとの別れの電話。

この電話一本で、私とガールフレンドの関係は全くなくなった。
元々、お互い深い関係ではなかったが、これで完全に赤の他人となったわけだ。

58 火星の美しい運河の話を聞いているみたいだ

秋川笙子、雨田政彦、そして別れた妻ユズとの電話。
ユズとは今度会うことになった。

秋川笙子とも連絡が取れ、まりえと会って話すことになった。

「しょうがないさ。前にも言ったけど、人が一人死んでいくというのは大がかりな作業なんだ。いちばん大変なのはなんといっても本人なんだし、文句は言えない」

人は生まれてくるのも死ぬのも大がかりな作業を伴う。
死。
生きている私たちには分からない感覚だが。
まあ生きていれば必ずそのうち死ぬんだし、いずれ分かるだろう。

59 死が二人を分かつまでは

はまりえと話す。
そして『騎士団長殺し』と『白いスバル・フォレスターの男の絵』を包装して屋根裏部屋に再び隠した。
まりえの涙。

屋根裏部屋に再び封印された『騎士団長殺し』と『白いスバル・フォレスターの男の絵』、とまりえ、みみずく。
多分、物語としてはこの章で終わっても良かったのかもしれない。
と思ったが、まあまりえがどこにいたか明かされないまま終わるのはさすがにダメか。

60 もしその人物がかなり長い手を持っていれば

秋川まりえが行方不明になっていた四日間、免色の家にいた事が明かされる。
それは別に免色が誘拐監禁したとかいうわけではない。
彼女は免色の屋敷に忍び込んだ。

免色が人知れず大事に残していた、かつての恋人、つまりまりえの母親の服。
免色はどんな想いでこの服を残しておいたのか。

61 勇気のある賢い女の子にならなくてはいけない

引き続き秋川まりえの回想。
騎士団長のアドバイス。
「そのときが来れば、諸君にはわかるはずだ」
騎士団長は言い残した。

62 それは深い迷路のような趣を帯びてくる

秋川まりえの話は続く。
彼女が免色の家を抜け出すところまで。

我々はそれぞれに明かすことのできない秘密を抱えて生きているのだ。

も、免色も。『騎士団長殺し』を描いた雨田具彦も。
そして恐らく秋川まりえも。

63 でもそれはあなたが考えているようなことじゃない

ここからは完全に後日談
と秋川まりえは秘密を共有した。
この事が終わった後も、まりえはひそかに私のもとへ遊びに来た。
まりえの肖像画はあえて完成させなかったが、彼女はそれを気に入って自分の手元に置いた。

私は『雑木林の中の穴』の絵を免色に進呈した。
雨田具彦は私が穴の中から救い出された週の土曜日に、息を引き取った。

私は再び肖像画の仕事を始め、ユズと再び一緒に暮らすことになった。

 

「絵が未完成だと、わたし自身がいつまでも未完成のままでいるみたいで素敵じゃない」とまりえは言った。

素敵な言葉だ。
管理人も、いつまでも完成を目指す未完成な人間でありたい。
完成してしまったらそれで終わりだから。

 

この現実の世界にそのまま永続する姿かたちなんて何ひとつないのだから。

考えてみれば当たり前の事だが、すっと入ってくる。

 

「私が生きているのはもちろん私の人生であるわけだけど、でもそこで起こることのほとんどすべては、私とは関係のない場所で勝手に決められて、勝手に進められているのかもしれないって。つまり、私はこうして自由意志みたいなものを持って生きているようだけれど、結局のところ私自身は大事なことは何ひとつ選んでいないのかもしれない。」

この作品における、ユズの唯一の意思表示となった台詞。
この台詞以外では、彼女は意思表示らしい意思表示をしていない。
結局、と同居している間に不倫した理由も曖昧だったし、子供を産もうと思った理由もきちんと明かされなかった。
全てこの台詞に集約されているのかもしれない。

64 恩寵のひとつのかたちとして

最後は数年後に起きた東日本大震災と、娘の(むろ)について。
東北の町は津波に飲まれた。
その中には、もしかしたら私が行ったあの町、白いスバル・フォレスターの男がいた町もあったかもしれない。

東北の地震の二ヶ月後には、あの雨田具彦の家が火事で焼け落ちた。
もちろん屋根裏部屋の『騎士団長殺し』も『白いスバル・フォレスターの男』の絵も燃えてしまった。
あの素晴らしい作品が燃えてしまったのは惜しくもあるが、あの作品は燃えるべくして燃えたのかもしれない。
これで良かったのかもしれない。

が結局誰の子供なのかは分からない。
しかし、免色と違ってには信じる力が具わっている。

ここで物語は終わる。




アンケート

ブログの今後書く記事などの参考にします。
もし良かったら回答していってください。
よろしくお願いします

 

Comment

  1. […] 【読書キロク】騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー […]

  2. ふにふに より:

    こんにちは。私も読み終わりました。白いスバルフォレスターの男は結局、何だったのか考えると夜も眠れません(笑)油絵の下絵に隠されている(隠喩されている?)ので二重メタファー=白いスバル男?室ちゃんが産まれて元サヤに収まってハッピーエンドなのだろうけど、管理人さんと同様、まだ咀嚼しきてれいません。ひょっとしてスバルフォレスターの男は室ちゃんの父親?などとよくない事まで考えてしまう。やっぱり精子がパケットみたく移動するのはおかしいし…知らなくていい事なのかなとか。うーん、続編があるなら読みたいですね。

    • utsuyama27 より:

      コメントありがとうございます。
      一応自分は、白いスバル・フォレスターの男は、ホテルの部屋で見知らぬ女の首をバスローブの紐で締めた時に、私の中に一瞬だけ湧いた凶暴性のようなもののメタファーなのかなと思いました。
      それを表に出してはいけない。だから絵は完成を拒んだ。そんな解釈をしました。
      室の父親に関してはは夢魔になった私か、ユズと付き合っていた男のどちらかだと考えています。
      常識的に考えると当時ユズと付き合っていた男なんですけどね。まあ私は自分の子供だと信じることにしたわけだし、真偽のほどは置いておいて、それでいいかな、と。
      ハッピーエンドかは分からないけど収まるところに収まったなという感じはします(笑)

  3. ふにふに より:

    こちらこそ、ありがとうございます。確かメンシキさんに念を押されてましたよね。あの穴の中に閉じ込めておこうと思えば出来たはずだ、と。そういう気持ちは湧いた事は本当にないのかと、何度も念を押されて…私は、んなことはないと言ってましたが、人は誰しも程度の差こそあれ暴力性はありますからね。私と継彦さんは何となく性格が似ている気がする。色々教えていただきありがとうございます。今夜はぐっすり眠れそうです。

    • utsuyama27 より:

      いえいえ、こちらこそありがとうございます!
      確かに免色さんの発言の穴の中に閉じ込めておこうと思え出来たはず、も凶暴性の部分に関係ありそうですね!
      これは気付かなかった。言われてみて、確かに…って納得しました。

コメントを残す